相続に伴う事業承継
会社の経営者や個人事業主が亡くなった場合、その会社・事業を相続によって引き継ぐことが考えられます。
会社であれば株式を引き継ぐことになりますし、個人事業であれば事業用資産を引き継ぐことになります。
こうした事業の承継も相続で財産を得ていることには変わりないため、相続税の課税対象となります。
しかしながら、一定の場合には経営する会社の株式や事業用財産にかかる相続税(事業承継でかかる相続税)の80%~100%が免除され、再度の相続発生など特別の事情が発生すればその相続税が免除されることもありうる特例税制が設けられています。
以下、どのような場合に特例の適用を受けられるか、概要をご紹介します(あくまで概略であり、詳細については税務署または弁護士などの専門職にご相談ください)。
なお、以下では、亡くなる方を「先代」、事業を相続する方を「後継者」と表記します。
会社経営者の場合その1––令和9年12月31日までの特例措置
以下の①~③の要件を満たすことで、制度の対象となる株式を保有する間、事業承継でかかる相続税全額の納税猶予が受けられます。
①令和5年3月31日まで、かつ②の認定を申請するまでに、後継者や経営見通し等を記載した「特例承継計画」を定め、税理士、商工会等の認定経営革新等支援機関の所見を書き添えて都道府県知事に提出して確認を受けること
②先代が亡くなったあと8か月以内に、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」12条1項の認定を都道府県知事に申請し、認定を受けるこ
③相続税の申告期限までに、この制度の適用を受ける旨を記載した相続税の申告書及び一定の書類並びに納税猶予額に見合う担保を提供すること(なお、承継する株式をそのまま担保にすることも可能です)
〇会社経営者の場合その2––一般措置
以下の要件を満たすことで、制度の対象となる株式を保有する間、事業承継でかかる相続税額の8割について納税猶予が受けられます。
ただし、承継後の5年間は平均して承継時を基準として8割の雇用を維持する必要があり、5年経過時に平均した雇用が8割を下回っていると猶予期間が打ち切られます。
①先代が亡くなったあと8か月以内に、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」12条1項の認定を都道府県知事に申請し、認定を受けること
②相続税の申告期限までに、この制度の適用を受ける旨を記載した相続税の申告書及び一定の書類並びに納税猶予額に見合う担保を提供すること(なお、承継する株式をそのまま担保にすることも可能です)
個人事業主の場合
以下の要件を満たすことで、この制度の適用を受ける事業用資産を保有し続ける間、相続税全額の納税猶予が受けられます。
①亡くなる前の先代が青色申告の承認を受けていること
②令和6年3月31日まで、かつ③の認定を申請するまでに、後継者や経営見通し等を記載した「個人事業承継計画書」を定め、税理士、商工会等の認定経営革新等支援機関の所見を書き添えて都道府県知事に提出して確認を受けること
③先代が亡くなったあと8か月以内に、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」12条1項の認定を都道府県知事に申請し、認定を受けること
④事業の承継から1か月以内に開業届出書を税務署に提出すること
⑤先代の死亡日に応じた一定の期限内(その年の1月1日~8月31日の死亡は4か月以内、9月1日~10月31日の死亡は12月31日まで、11月1日~12月31日の死亡は翌年2月15日まで)に、青色申告の承認または承認見込みを得ること
⑥相続税の申告期限までに、この制度の適用を受ける旨を記載した相続税の申告書及び一定の書類並びに納税猶予額に見合う担保を提供すること
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